料理は人生そのもの

最上級の牛肉のように、もともと逸品だが、近年、さらに熟成されて「食べ頃」を迎えたシェフがいる。30歳で料理人を志し、彗星のようにスターシェフの一人となった木下和彦氏。「おいしいものが食べたい」という思いを素直にぶつければ、笑顔で期待以上のものを出してくれる、料理の申し子のような人物だ。

Photo Masahiro Goda  Text Rie Nakajima

最上級の牛肉のように、もともと逸品だが、近年、さらに熟成されて「食べ頃」を迎えたシェフがいる。30歳で料理人を志し、彗星のようにスターシェフの一人となった木下和彦氏。「おいしいものが食べたい」という思いを素直にぶつければ、笑顔で期待以上のものを出してくれる、料理の申し子のような人物だ。

レストランキノシタ「八千代黒牛フィレ肉ロースト フォアグラソテー マディラソース」
「八千代黒牛フィレ肉ロースト フォアグラソテー マディラソース」。外は香ばしく、中はジューシーなヒレ肉に濃厚なフォアグラと今が旬のトリュフを贅沢に載せた一品。香り高いトリュフ、ジューシーな肉の旨み、フォアグラのクリーミーな甘みがものすごくおいしいハーモニーを生む。

「それからは大変でしたよ。早朝から夜中まで仕事漬けだし、調理師学校も出ていないから、年下の先輩たちにはものすごくしごかれて。でも負けず嫌いなので一人一人追い抜いていって(笑)、5年で2番手になりました。辞めようとしたこともありますが、叔母に『逃げるの?』と言われ、踏み留まりました」 

その後、誘われた「ブラッセリーヴェラ」のシェフを1年半務め、3カ月先まで予約の取れない人気店へと押し上げた。そして、初台に「レストランキノシタ」を開業する。「貧乏人の小せがれなので、失敗するわけにはいかない。保証人になってくれた親に迷惑をかけないよう、絶対うまくいかせようと無我夢中でした」と振り返る。

「ここ10年で、ようやくこの仕事は幸せのお手伝いだと思うようになりました。心を込めて、それが相手に伝わってこそ、特別感が生まれます。店は人生そのものですね」

青山「ラ・ブランシュ」の田代和久氏が憧れ。「今も市場でばったり会うと緊張しますよ」と、少年のように笑う。進化し続けるスープ・ド・ポワソンのように、料理人・木下和彦もさらなる進化を遂げていく。

レストランキノシタ 木下和彦氏

木下和彦
1959年福岡県生まれ。1989年、30歳でフランス料理店「レ・シュー」に勤め、料理人になることを決意。「ブラッセリーヴェラ」のシェフを経て、1997年東京・初台に「レストランキノシタ」をオープン。2002年に代々木に移転。

●レストランキノシタ
東京都渋谷区代々木3-37-1
エステートビル1F
TEL 050-5487-0443
gfuh200.gorp.jp

※『Nile’s NILE』2019年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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