料理は人生そのもの

最上級の牛肉のように、もともと逸品だが、近年、さらに熟成されて「食べ頃」を迎えたシェフがいる。30歳で料理人を志し、彗星のようにスターシェフの一人となった木下和彦氏。「おいしいものが食べたい」という思いを素直にぶつければ、笑顔で期待以上のものを出してくれる、料理の申し子のような人物だ。

Photo Masahiro Goda  Text Rie Nakajima

最上級の牛肉のように、もともと逸品だが、近年、さらに熟成されて「食べ頃」を迎えたシェフがいる。30歳で料理人を志し、彗星のようにスターシェフの一人となった木下和彦氏。「おいしいものが食べたい」という思いを素直にぶつければ、笑顔で期待以上のものを出してくれる、料理の申し子のような人物だ。

牛肉は「八千代黒牛」ひと筋

15年来、牛肉は千葉県匝瑳市の塙牧場の「八千代黒牛」を仕入れています。あるホテルのフェアで食べて、「めちゃくちゃ旨い!」と思ったのがきっかけで、紹介していただきました。
塙正一さんという名人が育てているのですが、黒毛和牛とホルスタインの交雑種を上手に育て、純血に劣らないA5ランクをたくさん獲得しています。牛舎にも伺ったことがありますが、すごく清潔で木屑(きくず)と牧草のいい香りがしたのが印象的でした。

ごくたまに別のものもとってみたりしますけど、たいていはこの牛です。他にもブランド牛はありますが、普通は生産者までたどれないのです。塙牧場は小さいからこそ、その人が作ったものを持ってきてくれる。思い入れがありますし、物語があったほうがこちらも頑張れます。そこに愛情がありますからね。

仕入れた塊の肉を前にして、今日はどうやって切ろうかなと思う時が楽しいです。肉に合わせて、メニューに載せていない料理をご提供することもあります。いい牛肉からはいっさい無駄が出ません。八千代黒牛はそのままで最高の肉なので、いわゆる熟成肉にはしませんが、よりおいしくするために余分な水分を抜き、食べ頃を見極めるなど、日々研究しています。

ほれ込んだ一生モノの鍋

鍋はドイツのメーカー「フィスラー」のプロ用をずっと愛用しています。18年くらい使っていてもいまだに発見があって、毎日、楽しいです。最初の出合いは、お客様でフィスラーの方がいらっしゃって、紹介してもらったこと。当時はまだ日本でフィスラーが売り出されたばかりだったと思います。今では家庭用の鍋としてもポピュラーになりましたよね。

レストランキノシタ、鍋

使ってみての第一印象は正直、イマイチかなと思ったのですが、使い方が間違っていたんです。ちゃんと使うと、タマネギを炒めても焦げずに甘みが出るし、スープなどはすぐ温まるし、蓋もしっかりしていて気密性が高い。はやりの無水調理が昔からできる鍋です。これはいい、と思って、店を代々木に移転した時に、この鍋を最大限に生かしたいと厨房にプラックを導入しました。頑丈なのはさすがドイツ製で、まだまだ長く使えそうです。

20年先を見越したブルゴーニュワイン

料理に劣らず、情熱をかけてきたのがワインです。特にドメーヌによってはっきりとした持ち味があるブルゴーニュが好きで、ずっと購入してきました。近年、ブルゴーニュは、リリースされた年に買わないと、飲みごろになると高すぎて買えないんですよ。

だから最初に買って、しっかりと保管して、“飲みごろ”を待つしかない。ただ、飲みごろになるまで何年もかかるので、僕ももう60歳ですから、そろそろ買うのを控えていかないと大変です(笑)。

レストランキノシタ、ワインセラー

とはいえ、ブルゴーニュのいいドメーヌは、毎年販売する割り当てが決まっているので、一度やめてしまうと次がなくなってしまいます。すでに思い切ってやめたところもありますが、なかなか好きな造り手は外せません。あと20年は頑張って店を続けて、最高のワインをお客様に味わっていただきたいですね。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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