トップランナーの叡智

今から20年以上前、中国料理に旬の食材を取り入れ、銘々盛りを始めた脇屋友詞氏。現在ではポピュラーとなったこの感覚を大々的に打ち出したのは、脇屋氏が最初だった。その後も料理界の最前線を走り、国内外で活躍。還暦を迎えた今なおエネルギッシュに活動し、中国料理の可能性を広げ続けている。

Photo Satoru Seki  Text Izumi Shibata

今から20年以上前、中国料理に旬の食材を取り入れ、銘々盛りを始めた脇屋友詞氏。現在ではポピュラーとなったこの感覚を大々的に打ち出したのは、脇屋氏が最初だった。その後も料理界の最前線を走り、国内外で活躍。還暦を迎えた今なおエネルギッシュに活動し、中国料理の可能性を広げ続けている。

お客様が心底喜んでくれた、銘々盛り

中国料理の前菜は大皿盛りが伝統ですし、格式もありますし、昔は誰もが「そういうものだ」と思っていました。でも実は遠慮が出るなど、食べる側は不自由が多かったのです。

そんな雰囲気を私は感じていたので、伝統に背くことにはなるのですが、ある時、前菜を銘々盛りでお出ししたらお客様が本当に喜んでくれた。この経験で吹っ切れ、少量多種で一人分ずつ盛ろう、季節感を出そう、五味を意識しよう、食感や彩りにも抑揚をつけよう……と、楽しみながら考えたのが、今回紹介している前菜です(次のページ)。

料理名は「九つの喜び」です。「九」は中国で「久」と同じ発音で、お祝いの数字です。食材も味もいろいろ、伝統的な品から和を感じる品までを織り交ぜ、一口サイズの9品を盛り合わせています。

ちなみにこの前菜の前には、例えば晩秋なら、上湯(中華スープ)で溶いたポタージュ風の蕎麦がきの上に、翡翠色(ひすいいろ)の銀杏ソースをかけた熱々の小さな一品をお出ししています。感覚としてはフレンチのアミューズのような料理ですが、蕎麦がきは和のものです。

そして上湯を使っているので、当然、中華のニュアンスもあります。他ジャンルであっても気に入った要素は自由に取り入れ、楽しみながら中国料理に向き合っています。

お茶から茶器へと関心が広がって……

中国茶は、2000年くらいから日本でブームになりましたね。その少し前から私も個人的に中国茶のファンになっていて、次第に台湾や香港、杭州に買い付けに行くようになりました。

そうなると茶器もコレクションするようになり、宜興(ぎこう)という、上海や杭州から少し内陸にある陶器で有名な街なのですが、そこまで買いに出かけるまでに。

有名な作家さんの、結構値段の張るものも買ってしまいましたね。写真の中の、大きい二つが宜興で買ったもの。形の美しさ、表面のなめらかさが格別です。

Wakiya一笑美茶樓、急須

一方、台湾では小さい急須を使います。コロンと丸い、あるいは平らなどいろいろな形がありますが、これは丸くもんだ茶葉、葉が開いたままの茶葉、それぞれに最適な形なんです。

なので、贅沢ですが、お茶の種類ごとに急須が決まっているのが本式です。そして高級なものは空気も漏らさないほど蓋と本体が付き、密封性があります。そんな上質なものに出合うと、ついまた買ってしまいたくなります(笑)。

マコモダケには、思い入れがあります

私が20代でまだ修業中の頃、今から30〜40年前になるのですが、マコモダケは台湾と中国から輸入していました。それが、今は日本で作っている農家さんがいっぱいいます。
マコモはイネ科の植物で、お米を作っている田んぼで同様に育てられています。

私も産地には何度も行きましたが、きれいな水の中にトウモロコシのようにスッと立っている姿がすがすがしいです。刈りたてをすぐに折って食べると、甘くておいしいんですよ。

10〜11月は、甘みが凝縮した生のマコモダケを食べられるシーズン。店でも、スライスしてサラダに仕立てたものを肉料理の付け合わせにたっぷりとつけるなどして、お出ししています。

農家さんが勉強して、きちんと開発して、フレッシュなマコモダケが随分と手に入りやすくなった。であれば、料理も進化しなくてはいけません。

トゥーランドットをオープンした20年ほど前に、私は「マコモダケの牛ロース巻き」という料理を考案して、これが大ヒットしたんです。なので、もう何十万本もマコモダケを使っていると思います(笑)。

ただ、実際にうちの店で使うというより、マコモダケの知名度を上げたという意味で、農家さんに貢献できたかな。それが何よりもうれしいですね。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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