Steps to essence

イセエビをシャンパンで洗った一品。それは調味料を一切使わず、塩さえ振らなくても、全身を覚醒させる「美しい味」だった。白和えを豆腐から作るような隠れた仕事へのこだわりが、新時代の味となる。

Photo Masahiro Goda  Text Rie Nakajima

イセエビをシャンパンで洗った一品。それは調味料を一切使わず、塩さえ振らなくても、全身を覚醒させる「美しい味」だった。白和えを豆腐から作るような隠れた仕事へのこだわりが、新時代の味となる。

「料理においてのおいしさの方程式で言えば、昭和は脂×塩=旨い、でした。平成は脂や糖分が倦厭(けんえん)されて、ケーキでも“甘くない”が褒め言葉のようになったけど、まだ旨みに頼っていた。
特に、獣肉の旨みですね。フランス料理は平成にソースから脱却し、日本料理も今、醤油から脱却しようとしています。鮨や天ぷらでも塩で食べることが増えてきているし、もっと究極には、今回の料理のように雑味を取り除き、さらに香りを引き出せば、塩さえいらなくなるのです」

目指すのは、「旨み」ではなく「美しい味」。

「『美しい味』と書いて『美味しい(おいしい)』と読む。それは、日本料理だけが実現できるものだと思っています。例えばお吸い物。外国の方に提供すると『なぜ味がついていないのか』と言われることがあります。一口の量でもおいしいと感じる西洋のスープと違って、お吸い物の一口目は薄いと感じるけれど、最後まで飲んで脳と体に塩分が蓄積されて初めておいしいと思える料理。こうした日本料理の美学をさらに突き詰め、目には見えない部分こそを大切にする。それが令和の料理だと考えています」

日本料理かんだ 神田裕行氏

神田裕行 かんだ・ひろゆき
1963年徳島県生まれ。大阪「喜川 昇六」で日本料理の世界に入り、パリの日本料理店で5年間料理長を務めた。帰国後は徳島の料亭「青柳」に勤めるとともに平成調理師専門学校の講師を兼任。2004年に元麻布「かんだ」を独立開業。2007年に『ミシュランガイド』が日本に上陸して以来、連続して三つ星を獲得している。

●日本料理かんだ
東京都港区愛宕1-1-1
虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー1階
TEL 03-5786-0150
www.nihonryori-kanda.com
※ 2022年、元麻布から愛宕へ移転し、名称変更されました。

※『Nile’s NILE』2019年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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