100年記憶に残る味 前編

究極の素材を縦横無尽に使いこなした、圧巻の料理をふるまう「懐石 小室」。懐石料理の神髄を受け継ぐ数少ない名店である。

Photo Masahiro Goda  Text Hiroko Komatsu

究極の素材を縦横無尽に使いこなした、圧巻の料理をふるまう「懐石 小室」。懐石料理の神髄を受け継ぐ数少ない名店である。

懐石 小室
香住の蟹屋さんにゆで上げてもらったせいこ蟹をほぐして詰めなおしたもの。内子と外子もたっぷり。彩りに黄と紫の菊を添えて。

「和幸で十数年、みっちりと仕込まれました。だしのとり方から、お造りの引き方、焼きもの、炊き合わせと、すべての技術の基本はおやっさんと呼ばせてもらった、高橋一郎氏から引き継いだと言っても過言ではありません。技術的なことばかりでなく、人としてどうあるべきか、料理屋はどうあるべきか、そんなこともすべてです」

同時に、小室氏にとって大きかったのは、茶の湯との出会いであった。茶事の出張料理を頼まれることも多く、初めて茶と接点を持つことにより、物事の本質に近づきたいという気持ちを身につけることができたという。季節を重んじ、あるがままの姿を受け入れ、そのうえで料理へと整えていく。中でも縁のあった遠州流では、わびさびの心に武家の華やかさも加わった、綺麗さびをよしとする。日々の修業の中で自然にそんな美意識を身につけた。現在でも遠州流の茶事は度々仕事で受けるが、毎回緊張するし、その度に初心に立ち返るような学びがあるそう。

ほかに影響を受けた料理人を聞くと、2人の料理人を挙げてくれた。「まず、京都『八寸』のご主人・久保田完二さん。カウンターという場でのエンターテインメント性というのかな、ただ美味しいものを出していてもダメ。食事を媒介に、時間と空間をいかに楽しませるかが大切であることを自ら見せてくれました。

もう1人挙げるなら立川にあるそば屋『無庵』のご主人の竹内洋介さんですね。“大人学”というんですかね、建築が好きな方で、露地とか、明かりとか、花など物事の美学のようなものを教えてくれました。遊びにも随分連れていってもらいました。20歳も上の先輩ですから、大人としての粋を身をもって示してくれましたね」と懐かしそうに語ってくれた。

100年記憶に残る味 後編 へ続く

懐石 小室 小室光博氏

小室光博 こむろ・みつひろ
1966年、東京生まれ。今は亡き、懐石料理の名店「和幸」で、十数年間修業を積み、2000年に神楽坂にて「懐石 小室」を開店。2018年に数寄屋造りの一軒家へ移店。2021年秋から、お取り寄せ、だしパックの販売などにも積極的に取り組む。

●懐石 小室
東京都新宿区若宮町35-4
TEL 03-3235-3332
kaiseki-komuro.jp

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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