簡素にして独自の美学 前編

明治時代、仕出しの専門店としてスタートした「辻留」。2代目の辻嘉一氏は茶懐石の店をオープン、3代目の辻義一氏は北大路魯山人に師事。そんな辻留の歴史を継ぐのが、赤坂店料理長の藤本竜美氏だ。

Photo Satoru Seki  Text Izumi Shibata

明治時代、仕出しの専門店としてスタートした「辻留」。2代目の辻嘉一氏は茶懐石の店をオープン、3代目の辻義一氏は北大路魯山人に師事。そんな辻留の歴史を継ぐのが、赤坂店料理長の藤本竜美氏だ。

懐石 辻留
辻留で出す正月の雑煮は、関東風の澄まし仕立て。焼き餅、うずら叩き寄せ、亀甲大根、日の出にんじん、うぐいす菜、松葉柚子で華やかに仕立てた。選び抜いた利尻昆布と本枯節のかつお節でとる出汁に、うずらの旨みが溶けて滋味が生まれる。

懐石 辻留 藤本竜美

辻留 赤坂店の料理の責任者を務める藤本竜美氏は、高校卒業後に辻留の赤坂店に入ってから37年間にわたり同店一筋に経験を重ねてきた。藤本氏の実家は仕出しの専門店を営んでいたため、小さな頃から日本料理に親しむ環境にあったという。そこから人の紹介を得て、日本を代表する茶懐石の店へ。辻留2代目の辻嘉一氏の晩年に触れるとともに、3代目の義一氏に長く師事した。

「先代(嘉一氏)は、店に入りたての小僧だった私にとっては雲の上のような存在。時折お軸などの届けものをした時は『よっしゃ! ご苦労はん!』なんて言って、サインをした著書を下さることもありました」。
一方、義一氏は師匠でありながら父親のような存在。「主人(義一氏)は料理については厳しいのですが、人としてはとても優しく、東京に出たての私を東京案内に連れ歩いてくれました。今も大切な思い出です」

辻留といえば辻義一氏が師事した縁から、北大路魯山人と深いつながりがあることでも知られている。魯山人は型にはまらない美意識を貫いた、書家にして篆刻家、陶芸家にして料理も能くした巨人。藤本氏はきわめて強い影響を受けたと話す。

「書籍を通して考えや生き方を学びましたし、当店にある魯山人の器からも日本料理における器の“美”を知りました。また、魯山人が逗留した料理店や旅館を訪ねて、その足跡を追いかけたり(笑)。もちろん、『素材の持ち味を生かす』を説いた料理の考え方も、私の料理人としての方向性を形作っています」

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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