美食のバスク 前編

イエズス会を創設し、キリスト教布教のため東洋に向かったバスクの男たち。働くことの価値を守り、頑固だが革新性に富んだ彼らは食の世界をも変えた。

Photo Chiyoshi Sugawara Text Chiyoshi Sugawara

イエズス会を創設し、キリスト教布教のため東洋に向かったバスクの男たち。働くことの価値を守り、頑固だが革新性に富んだ彼らは食の世界をも変えた。

一緒に食べ、歌い、踊る

ソシエダ・ガストロノミカ
男たちの社交場「美食クラブ」の食事会。美食という言葉と裏腹に男たちが大勢で集う料理は味本位で仲間同士の会話を促す。食事が終わる頃、誰かが歌いだすと合唱になる。

海の幸、山の幸をもたらす豊かな自然は、同時に厳しい生活環境でもある。そこでは牧羊や漁業などの共同作業を通じてともに食べ、歌う習慣が生まれ、結び付きの強いコミュニティー文化が育まれ、ソシエダ・ガストロノミカ(バスク語でチョコ)、いわゆる「美食クラブ」の背景となって、バスクの食文化を支えていった。
 
美食クラブは19世紀後半にサンセバスティアンで始まり、当初は職人たちのギルドや互助会といった性格を持っていた。牧羊や漁業が主体のバスクでは、男性は長期間家を留守にすることが多く、女性が家を守る母系社会であったことも要因とされる。そこで男たちの自己解放の場として社交クラブが次々に生まれたが、突出していたのは「食」を楽しむクラブで、自ら料理を作り、歌い、仲間の絆を深めた。一方、家庭では長い歴史の洗礼を受けながら生き抜いた家庭料理が受け継がれていた。

  • ソシエダ・ガストロノミカ ソシエダ・ガストロノミカ
    けっして気取った料理ではない。役割は自然に決まり、調理の手際はほとんどプロ並み。ワインや基本的な食材はストックされ、費用は参加者全員で均等に分担する。
  • ソシエダ・ガストロノミカ3 ソシエダ・ガストロノミカ3
    「ポキト・マス!(もう少し)」とお互いに料理を勧め合いながら食事が進む。
  • 料理1 料理1
    出来上がった料理は、みんなの前で皿に盛りつけされる。左後ろはストックされたワイン。
  • シーフード シーフード
    シーフードのパスタ。料理の皿が行き渡ると調理担当も席について乾杯
  • 野菜 野菜
    新鮮な野菜をサッと素揚げしただけだが、極上の一品こそ真の美食だ。
  • 赤ピーマン 赤ピーマン
    ナバーラ県ロドサの名産ピキージョ(赤ピーマン)は用途が広い食材。
  • アサリご飯 アサリご飯
    土鍋で炊きあげられた「アサリごはん」はバスク各地で見られる定番のお米料理
  • ソシエダ・ガストロノミカ
  • ソシエダ・ガストロノミカ3
  • 料理1
  • シーフード
  • 野菜
  • 赤ピーマン
  • アサリご飯

クラブの目的や性格は異なっていても「男だけ」と「食べる」ことは共通し、加えて「女性禁止」というルールは、謎めいたものを感じさせた。しかし、1920年代に若い世代のクラブが次々に生まれ、また社会環境の変化もあり、休日や祝祭日にゲストとして女性の出席を認めるなどクラブも変化した。現在では無条件で女性が参加でき、あるいは会員になれるクラブもあるという。

美食のバスク 後編」へ続く

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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