ボジョレーの帝王に謁見して

ボジョレーワインの立役者、ジョルジュ・デュブッフ。1988年に氏と面会した際のエピソードをまつなみ靖が振り返る。

Text Yasushi Matsuami

ボジョレーワインの立役者、ジョルジュ・デュブッフ。1988年に氏と面会した際のエピソードをまつなみ靖が振り返る。

ジョルジュ デュブッフ社のワイン

テイスティングの際、ワインを口に含み、味と香りを確認するとシンクに向かって瞬時に吐き出す。その仕草が実に見事で素早く、常に同じ軌道でワインが飛んでいく様にも驚かされた。
 
ボジョレーワインの魅力を、デュブッフ氏はこう語ってくれた。

「ボジョレー地区には、小規模なブドウ農家が多いのですが、皆オープンでいい方ばかり。そんな土地柄が、ボジョレーワインに反映されています。アロマに富み、フルーティーかつ繊細でエレガント。ブドウそのものを表現しているような魅力や楽しさがある。親しみやすくワイン初心者でも、また一日のどんな時でも、例えば午前10時に友人とソーセージをつまみながら、という時でもフィットします。その一方、クリュ ボジョレーのように、しばらく寝かせて楽しめるワインもある。実は先日、大切な来訪者のために45年の『ムーラン・ナ・ヴァン』を開けたのです。偉大なブルゴーニュのニュアンスの一方、ガメイ種の特徴がしっかりと感じられ、実にファンタスティックでした。通常は5~10年ほどの熟成に耐えるのですが、よいヴィンテージのものは、さらに長命なのです」
 
ワイン造りで大切なことを尋ねると「自分のスタイルに忠実なワインを造ること」と答えた、このボジョレー最大の功労者は、今はもういない。しかし後継者や、この地区の新たな世代の生産者が、ボジョレーの世界観を継承・発展させている。
 
近年、ブルゴーニュやボルドーが高騰し、入手しにくい状況が続いている。その中で、ボジョレーへの関心が欧米では高まり始めているという。食事と合わせて楽しむ可能性の広さに気付いているシェフやソムリエも少なくない。そもそもボジョレーからリヨンにかけてのエリアは美食で知られ、ボジョレーワインをハウスワインとして置いているレストランやビストロも多い。日本でもワイン文化が浸透し、成熟してきた今こそ、ワイン愛好家が改めてボジョレーに目を向け、その価値を正当に評価する時ではないだろうか。
 
能書きはさて置き、まずは2022年のヌーボーで乾杯したい。すでに味わった方も、これからという方も、今世界を取り巻くさまざまな困難を乗り越えて届いた、生まれたての自然の恵みに、感謝を捧げよう。そこから始めればいいじゃないか、Santé‼

●取材・写真協力/サントリー

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
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