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鎌倉モダンの源流を行く 前編

戦争や震災を経てもなおモダンな姿を今に残す、通称「鎌倉洋館のビッグ3」を巡る散歩へ出かけた。
まずは、鎌倉文学館へ向かおう。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

戦争や震災を経てもなおモダンな姿を今に残す、通称「鎌倉洋館のビッグ3」を巡る散歩へ出かけた。
まずは、鎌倉文学館へ向かおう。

  • 鎌倉文学館鎌倉文学館
    (左)庭園の南側にバラ園が広がる。「鎌倉」「静の舞」「流鏑馬(やぶさめ)」など、鎌倉ゆかりの名のついたバラなど、約200種・250株が楽しめる。春のバラは5月中旬から6月中旬、秋のバラは10月中旬から11月上旬が見頃で、ここを会場にしたさまざまなイベントが開催される。
    (右)坂の途中にあるトンネル。源頼朝が鶴を放ったという故事に因み「招鶴洞」と名づけられた。前方から射す陽光に、青々としたカエデの葉がきらめく様が美しい。鎌倉文士たちが放つ文学の風は、ここから町中に吹き抜けるのかもしれない。
  • 鎌倉文学館鎌倉文学館
    三島由紀夫は『春の雪』の中で、文学館へのアプローチをこう描写している。
    —青葉に包まれた迂路を登りつくしたところに、別荘の大きな石組みの門があらわれる。—
    三島と同じ風景を見ていると思うと、それだけで幸福感がわいてくるというものだ。
  • 鎌倉文学館鎌倉文学館
    建物内部では照明器具など、随所にアールデコの様式が見られる。ステンドグラスは、部屋ごとに異なるデザインで、さまざまな幾何学模様が目を楽しませてくれる。
    洋の暖炉、和の違い棚というふうな和洋折衷の装飾や、建築当時の面影を残す寄せ木細工風の床なども楽しい。
    この画像のステンドグラスは、1985年の文学館としての開館時にとりつけられたもの。
  • 鎌倉文学館
  • 鎌倉文学館
  • 鎌倉文学館

門の先に、広大な敷地が広がる。三方を山に囲まれ、前方に海を望む、鎌倉の特徴的な地形である「谷戸」の一つを占める。ここに立つ洋館は、青い洋瓦の切妻屋根が特徴的。随所に和のデザインを取り入れた独特の外観が目を引く。

建物の歴史をたどると、元は加賀百万石の藩主として知られる前田利家の系譜、旧前田侯爵家の別邸。1890(明治23)年ごろ、15代当主・利嗣が土地を手に入れ建てた時は、「聴涛山荘」という名の和風建築の館だったそうだ。しかし約20年後に焼失。洋風に再建され、さらに関東大震災による倒壊を経て、新しい別邸が建てられた。洋風建物で、当地にかつてあった寺の名に因んで「長楽山荘」と呼ばれていたという。

今に残る洋館は、それを16代当主・利為が1936(昭和11)年に改築・完成させたものである。さらに第2次世界大戦後は、米軍による接収を経て、デンマーク公使や佐藤栄作が借りて別荘としたと伝えられる。佐藤が近くに住む川端康成と交流したほか、小林秀雄や永井龍男らが集い、また三島由紀夫が小説『春の雪』を執筆する際に取材で訪れるなど、作家たちとの縁を深めた。1983(昭和58)年に市に寄贈されて後、1985(昭和60)年に文学館に生まれ変わったのも自然の流れと言えよう。

●鎌倉文学館
神奈川県鎌倉市長谷1-5-3
TEL 0467-23-3911

鎌倉モダンの源流を行く 前編(鎌倉文学館)
鎌倉モダンの源流を行く 中編(旧華頂宮邸)
鎌倉モダンの源流を行く 後編(古我邸)

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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