ヨルダン川西岸をゆく 後編

ヨルダン川とイスラエルの間にあり、パレスチナ自治区の一部を成すヨルダン川西岸地区。世界で最も低い土地に1万年前から文明が花開き、欧米列強に翻弄されながらも、たくましく生き続ける人々がいた。

Photo Chiyoshi Sugawara Text Chiyoshi Sugawara

ヨルダン川とイスラエルの間にあり、パレスチナ自治区の一部を成すヨルダン川西岸地区。世界で最も低い土地に1万年前から文明が花開き、欧米列強に翻弄されながらも、たくましく生き続ける人々がいた。

ヨルダン川西岸をゆく 中編」から続く

エルサレムからベツレヘムへ

エルサレム旧市街
オリーブ山から見た神殿の丘とその背後に広がるエルサレム市街。青いドームの屋根は聖墳墓教会。旧市街の南シオンの丘はシオニズム(ユダヤ人国家建設運動)の語源となった。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それぞれが歴史に刻まれてきたエサレム。東エルサレムに位置する1㎞四方の壁に囲まれた旧市街にはユダヤ教の聖地「嘆きの壁」があり、磔刑(たっけい)の判決を受けたイエスが十字架を背負ってゴルゴタへ向かった「ヴィア・ドロローサ」や、イエスの墓があり復活にちなむ「聖墳墓教会」はキリスト教の聖地として、預言者ムハンマドが昇天した「岩のドーム」はイスラム教の聖地として知られる。

東のオリーブ山から見下ろす旧市街は、南東の一画を占める神殿の丘にあって金色のドーム屋根がまばゆい岩のドームに象徴される。預言者ムハンマドが昇天し、神にまみえたと言われる岩の上に建てられた7世紀末のイスラム寺院は、青を基調とする鮮やかなモザイクタイルで覆われた美しい建物で、その南隣にはアルアクサ・モスクがあり、静かに祈る人や、窓明かりでコーランを読む老人がいた。その背後の壁の外側が嘆きの壁で、男女に分かれた大勢の人々が高さおよそ20mの壁に額をつけて祈っている。壁の石の隙間や小さな穴に押し込められた紙には、彼らの願いでも記されているのだろうか。

  • 岩のドーム 岩のドーム
    神殿の丘にそびえる岩のドームを東から望む。預言者ムハンマドが昇天したと言われる岩の上に7 世紀末に建てられた寺院にはイスラム教徒以外の立ち入りが禁じられている。
  • 岩のドームの内部 岩のドームの内部
    (左上)ムハンマドの秘書ザイドが編集したと言われるイスラム教の聖典クルアーンはアラビア語で書かれ、アラビア語以外の言語は神聖な力が宿っていないとして認められていない。(左下)アルアクサ・モスクの広い礼拝所の柱の周りには多数の聖典が用意されている。ミフラブ(メッカの方向を示すアルコーブ)は工事中だったが、熱心に祈りをささげる人がいた。
    (右)わずかな時間に限り特別な許可を得て撮影した岩のドームの内部の装飾。壁にマリアを象徴する文字が書かれていると伝えられるが、肉眼で確認することはできなかった。
  • 岩のドーム
  • 岩のドームの内部

狭い石畳の坂道は両側に小さな店がせめぎあい、壁に挟まれた道はやがて聖墳墓教会にたどり着く。

ローマ皇帝コンスタンティヌス1世(在位306~337年、330年に都をローマからビザンチンに移し、自らの名前からコンスタンティノープルとした。キリスト教を公認宗教とし最初のキリスト教皇帝となる)の母ヘレナによって4世紀前半に建てられたと言われ、現在は12世紀に十字軍が建設したロマネスク様式の聖堂となっていて、イスラム教徒が管理している。こうしたデリケートな背景を持つエルサレムの旧市街は、世界唯一の当事国を持たないユネスコの世界遺産となっている。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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