退廃とエロス・世紀末の官能画家

恍惚のただ中にいるような官能的な女性。見る者を一目でとりこにする、匂いたつような魔性の女性の表情を描かせたら、右に出る画家はいないだろう。グスタフ・クリムト。デザイン性の高い、工芸品のような総合芸術を実現した彼の油彩画を、過去最多となる25点以上集結させた、東京では約30年ぶりとなる大規模展が東京都美術館で開催された。

Photo Satoru Seki Text Rie Nakajima

恍惚のただ中にいるような官能的な女性。見る者を一目でとりこにする、匂いたつような魔性の女性の表情を描かせたら、右に出る画家はいないだろう。グスタフ・クリムト。デザイン性の高い、工芸品のような総合芸術を実現した彼の油彩画を、過去最多となる25点以上集結させた、東京では約30年ぶりとなる大規模展が東京都美術館で開催された。

学芸員
東京都美術館学芸員 小林明子 こばやし・あきこ
2011年より現職。専門はイタリア・ルネサンス美術。これまで担当した展覧会は「バルテュス展」(2014年)、「ボッティチェリ展」(2016年)、「ティツィアーノとヴェネツィア派展」(2017年)、「ムンク展―共鳴する魂の叫び」(2018年)など。

初期はアカデミックな作風で名を馳せ、やがて「黄金様式」の時代を開花させたクリムト。後期から晩年には《赤子(ゆりかご)》に代表されるような色彩豊かな作品を残した。また意外にも風景画を多く描き、その数は全クリムト作品250点余りのうち4分の1ほどを占める。

「晩年の色彩豊かな作品では、筆のタッチや色遣いが印象派のようにも見えますが、色彩の組み合わせやモザイク画のような装飾性に、クリムトならではの特徴が表れています。正方形のカンヴァスを用い、対象をクローズアップして描いた風景画も絵画というよりタペストリーのようです」 

本展覧会では「黄金様式」の時代を含む幅広い時期のクリムトの油彩画が25点以上紹介されている。

「クリムトの家族や女性関係について触れる章では、どのような人物だったのか、その一面を垣間見ることができるでしょう。クリムトは生涯独身を通しましたが、モデルの女性との間に、少なくとも14人の子供がいたと言われています。ただ、エミーリエ・フレーゲという女性だけは、恋愛関係というよりプラトニックな関係のまま、信頼を寄せ続けました。本展覧会では、クリムトからエミーリエに宛てた手紙や二人の写真も展示しています。瀟洒な作品で知られ、常に女性に囲まれていたクリムトですが、実際にはスポーツ好きで、牡牛のように太い首をした無骨な人物だったようですよ」

本展覧会は、世界一のクリムト作品のコレクションを持つベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館の全面協力により実現。日本とオーストリアの友好150周年記念という節目の年に、日本では過去最大規模で開催された。昨年、没後100年を迎えたクリムトの作品は、今見ても斬新で、美しく、洒脱である。

※『Nile’s NILE』2019年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
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アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
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