江戸を手本に呑めば、毎日が豊かになる

本の食べ時 第9回 君島佐和子

本の食べ時 第9回 君島佐和子

本の食べ時 第9回 君島佐和子  江戸を手本に呑めば、毎日が豊かになる

『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』
江戸呑み連中著/プレジデント社/2025年3月刊/2,200円

江戸呑み。いい言葉だ。『晩酌の誕生』『居酒屋の誕生 江戸の呑みだおれ文化』(共にちくま学芸文庫)で知られる食文化史研究家・飯野亮一氏の解説を手引きとして、酒の楽しみ方を江戸に学ぶ本である。『孤独のグルメ』原作者・久住昌之氏が案内役を務めている。

江戸呑みとは“江戸の酒呑みスタイル”を指すのだろうと思うが、私には“江戸を肴に酒を呑むこと”と読める。江戸それ自体がネタにしてつまみ。誰かとなら江戸を話題として、一人でならこの本を肴に酒が呑めるというものだ。

江戸時代に日本人の食生活は、1.生産技術の向上、2.加工食品(酒、醤油 、味醂、鰹節など)の商品化、3.流通網の拡大、4.料理屋・食べ物屋の発展、5.料理本の出版、6.町人文化の繁栄などによって大きく進展した。現代の和食の源流であり、いわば身近な古典。経済下降、人口減少、気候変動、資源危機が取り沙汰される昨今ではサステナビリティーの観点からもフォーカスされる。5R(リデュース、リユース、リサイクル、リペア、リターン)が当たり前の循環型社会にして、家財道具は最小限でも近隣コミュニティーでさまざまな機能を共有するシェア社会だったからだ。

巻頭の飯野氏と久住氏の対談(江戸時代の風俗を映す図版がふんだんに使われている)は、そんな江戸の暮らしと食を“呑み”の視点から鮮やかに浮かび上がらせる。振り売り、屋台、菜屋、刺身屋、煮売居酒屋、独り呑み、小鍋立て……二人の話に登場するエピソードの数々が物語るのは、自由度の高さであり、現代にも通用するユーザビリティーだ。

料理再現を担当した「江戸前 芝浜」の海原大さんは、江戸料理の探求を続ける料理人である。東京生まれの自身にとって郷土料理とは何だろうとの疑問から、飯野氏や江戸料理研究家として知られる福田浩氏(「なべ家」主人。現在は閉店)に師事して地道に研究を重ねてきた。ちなみに私は、日本の旅に文化的な奥行きを求める外国人が来日すると「江戸前 芝浜」へ連れていく。多くを語らずとも日本人のメンタリティーを感じ取ってもらうに格好の店なのである。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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