最新ガストロノミーの読み解き方を指南する

本の食べ時 第2回 君島佐和子

本の食べ時 第2回 君島佐和子

本の食べ時 第2回 君島佐和子、最新ガストロノミーの読み解き方を指南する

『美食の教養』
浜田岳文著/ダイヤモンド社/2024年6月刊/1,980円

この本は「おわりに」から読むことをお勧めしたい。著者・浜田岳文(たけふみ)さんの人物像を把握した上で読むほうが、説得力も面白みもがぜん増す。

浜田さんはフーディーである。フーディーとは「世界中を飛び回り、現地の美味しい店で食べる、これを日常的に繰り返している人たち」(本書より)。南極から北朝鮮まで、世界127カ国・地域を食べ歩いてきた。1年のうち5カ月を海外、3カ月を東京、4カ月を地方で。「自分が興味ある特定少数のこと以外に全くお金を使わない」「知的好奇心の奴隷」と自らを語る。1974年生まれの独身、住まいは家具家電付き・清掃サービスありのサービスアパートメントという徹底ぶりだ。世界の食通の投稿から成るレストランガイドOAD(Opinionated About Dining)のレビュアーランキングで2018年から6年連続1位と聞けば、副題「世界一の美食家が知っていること」に得心がいく。

美食の思考法、美食入門、世界の料理総まとめ、グルメ新常識、一流料理人の仕事、美食の未来予測の全6章に加えて、いい客になるための美食講座を差し挟んだ392ページ。世界のガストロノミーの最前線を俯瞰的に描きつつ、実践的でもある。全編に一貫するテーマは“鑑賞”。

「僕にとって、食も音楽も、ひいてはビジュアルアートや演劇も、すべてが芸術です。特に区別なく、同じ目線で楽しんでいます」、さらに「正直、僕の中では喉元を通れば食事という鑑賞行為は終わっているので、胃に入らないでほしい(お腹が膨れるので)と思うくらいです」には実感がこもる。

私がガストロノミーレストランとはもはや食事の場ではなく鑑賞の場であると痛感させられたのが2010年代後半。東京の現・三つ星店にディナーの予約を入れた時のことだった。17時スタートを提示された。その時間はまだ仕事中だからと19時スタートに変えてもらったものの、釈然としない。9時-5時という言葉があるように、生活時間帯の常識からすれば仕事終わりギリギリのタイミング。移動時間も含めたなら間に合いようがない。そんな時間になぜ? しばらく考えて、気付いた。私が予約したのは食事ではなく鑑賞だからなのだと。音楽家の演奏会が17時からに設定されて疑問に思う人はいない。17時開演なのだなと思うだけだ。プログラムに注文を付ける人もなく、用意された曲目に耳を傾ける。それと同じ。提示された時間に着席し、用意されたおまかせコースを味わう。ガストロノミーレストランは完全に鑑賞の場になった。食事と思ってはいけない。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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