インバウンドで鮨職人の仕事が進化する!?

本の食べ時 第1回 君島佐和子

本の食べ時 第1回 君島佐和子

『新時代の江戸前鮨がわかる本 訪れるべき本当の名店』 早川光著/ぴあ/ 2021年刊/ 1,650円
『新時代の江戸前鮨がわかる本 訪れるべき本当の名店』
早川光著/ぴあ/ 2021年刊/ 1,650円

食メディアの関係者が顔を合わせると、時折、鮨屋の話題になる。予約が取れない。注文の自由はなく一方的に出されるものを食べるだけ。「アジ、握ってください」なんてやりとりはなし。何より恐ろしく値段が高い……。「相手にされていない」と思わずにいられない鮨屋が増えたという嘆きは共通だ。プロ向け料理専門誌の編集長が「高額過ぎて下見に行けない。ここ数年、鮨特集を組んでいない」と語っていた。

なぜ、このような状況になったのか?

その理由を解き明かすのが本書、『新時代の江戸前鮨がわかる本』である。著者は、約40年にわたって鮨の世界を見続けてきた早川光氏。職人の技術のみならず、鮨だねとなる魚の漁法や流通にも精通する氏が、激変の背景と新常識を示す。

まず、「第1章 江戸前鮨は10年でこんなに変わった」で指摘されるのは、おまかせが当たり前になったこと、おつまみの比重が高くなったこと。以前はカウンターに座ると「つまみますか、握りますか?」から始まったものだが、おまかせが当たり前になった昨今は「10種のつまみと10貫の握り」がスタンダードだという。つまみ比率UPの要因として氏は日本酒を挙げる。若い蔵元が競い合うように酒質の向上に取り組み、鮨職人たちが共鳴。積極的に店に置くようになった結果、つまみの領域が広がったとの見方だ。

おまかせ浸透の背景にあるのがミシュランガイド刊行やインバウンド客の増加であるのは想像に難くない。鮨初心者にお好みでの注文はハードルが高く、「時価」という会計システムも理解しがたいだろう。ミシュランによって「日本のローカルフードだった江戸前鮨がフランス料理と並ぶ世界基準の料理として認められた」と本書にあるが、考えてみれば、「時価」が成り立つこと自体、ローカルフードだった証し。明朗会計のおまかせコースに集約されていったのは必然なのかもしれない。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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