「観光立国ニッポン」に残された最後の楽園

時代を読む 第127回 原田武夫

時代を読む 第127回 原田武夫

時代を読む―原田武夫 第127回、「観光立国ニッポン」に残された最後の楽園

「マクロ経済学で考える時、一国の経常収支赤字を解消する手段は二つある。一つは貿易収支を黒字にすること。そしてもう一つは観光収支を黒字にすること、すなわち観光立国をすることだ」

―かつて駒場にある大学で2年生であった時、「近代経済学」の講義でそう習ったことがある。その時、売れっ子であった担当のF教授はこうも付け加えていた。

「観光収支に注目するだなんて、今や対米貿易黒字が巨額になっているご時世からすると隔世の感がありますが。1960年代の初頭に我が国経済は一度危機に瀕し、本当に観光収支で食いつないだことがあるのです。64年の東京夏季五輪がその典型です」

早いものであの講義を聞いてから30年余りの月日が経った。その間、世界経済は「グローバル経済」と呼ばれるようになり、我が国経済は「平成バブル崩壊」によってものの見事に粉砕し、現在に至っている。そして今、我が国は「観光立国」として己の姿に最後の望みをかけているように見える。政財官学のどこを見ても「産業立国ニッポン」を真面目に考えているリーダーシップは全くもって見つけることができない。そうした中で今度は戦後の我が国における花形中の花形であったはずの自動車産業で検査不正という大規模なスキャンダルが発覚した。「産業立国ニッポン」はますます遠のいていく。

「若い世代にスタートアップ創業で頑張ってもらえばいいではないか」

そう、政治家たちや財界のお歴々は気軽にのたまっている。しかし彼らの言動からは要するに「若い馬たちに金のなる木を目がけて競争させ、少しでも先んじそうな駿馬 =若きアントレプレナーたちにカネというニンジンをぶら下げて全力疾走させて、最後は新規株式公開(IPO)でしこたま自分たちがもうけること」ができればいいというのが見え見えであるだけに、全くもって成功していないのである。我が国政府は10兆円もの国家予算をかけて「スタートアップ元年」を支えるというが、その実、首相官邸では人手不足を理由に全くプランが実現に向かっていないとも聞く。要するに見掛け倒しなのである。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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