適正価格

食語の心 第125回 柏井 壽

食語の心 第125回 柏井 壽

美容院や理髪店などはどうなのだろう。諸外国との価格差はどの程度あるのか分からないが、おそらく似たようなものだろうと思う。いろんな業界で海外との価格差があるのに、なぜ食の値段だけが、ひんぱんに口の端に上るのか、なんとも不思議だ。おそらく食の値段の上下が、人の目に触れる機会が多く、話題にしやすいからだろう。その価格差をあらわにしたのは、ほかならぬ外国人たちである。

外食の価格に極端な地域差が出てきたのも最近の特徴で、その主な要因はインバウンドの急増によるものだ。北海道のニセコなどのスキーリゾートが、その典型だろうか。ラーメン1杯が2000円を超え、牛丼1杯が3000円近くしても、順調に売れているのは、海外からスキーを楽しみにやってきた外国人客のおかげだと、飲食店側は口をそろえる。

ここで持ち出されるのが、先述した海外との価格差だ。海外ならそれくらいの価格は当たり前なので、外国人は納得して食べているという論法だ。だがその店に来るのは外国人だけではない。以前からの日本人客にとって2000円のラーメンは法外とも取れる金額なので、その店に来なくなっても当然だろう。

インバウンド客がさらなる高騰を呼んだのは豊洲市場にオープンした飲食店で、1万8000円のウニ丼が話題となっている。たしかに生ウニの価格は高騰しているようだが、それでもふつうなら3000円も出せば食べられるはずだが、その数倍の価格を出してまで食べる客がいるのだろうか。

どこかで歯車が狂ったとしか思えない食の価格。これから先、どうなっていくのか、不安は募るばかりだ。

柏井壽 かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。

※『Nile’s NILE』2024年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
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