悪性インフレが間もなく始まる

時代を読む-第30回 原田武夫

時代を読む-第30回 原田武夫

時代を読む――原田武夫 第30回 悪性インフレが間もなく始まる

私はご縁を頂いた我が国メガバンクの最高幹部の皆さまのところに定期的に遊びに行く。ビッグディールのためではない。単に「遊び」に行くのである。

こちらからは無論、ジャーナリスト連中のように何か特別な非公開情報を引き出そうとはしない。不思議なもので、必要な情報は必要なタイミングで必要な人々に伝達されるようになっているからだ。私自身はあくまでも気に入った菓子折り一つを手にメガバンクの応接室に遊びに行く。そんなわけで最高幹部の皆さまも実に気楽にご対応くださる。誠にありがたい限りである。

先般も我が国屈指のメガバンクの一つであり、中でも最も意欲的(bullish)な投資態度で知られる銀行の最高幹部の元を訪問させていただいた。お忙しい中、小一時間ほども私とのよもやま話にお付き合いいただいた。我が国の「財界」が一体どちらに向いているのかがよく分かった次第である。繰り返しになるが、非常にありがたい経験であった。

私はこの手の「よもやま話」の場で自分の意見を決して言わない。なぜならば、そもそもそうした最高幹部クラスの方々とお会いさせていただくこと自体が一つの“流れ”だからであり、その“流れ”を私が気ままに、吐く言葉(=「言の刃」)で切り刻んでしまうべきではないからだ。“流れ”は流れのままでなければならない。そう、私はこの道に入り躾(しつけ)をしてくださっている古神道の師匠からきつく言われている。この時も当然、そのように振る舞った。すると問わず語りで「飛ぶ鳥を落とす勢い」で知られるこのメガバンク最高幹部氏はこう私に話してくださったのである。

「現在、我が国が官民合わせて持っている資産は、莫大(ばくだい)な公的債務を差し引いても、3000兆円ほど余る計算だ。問題はこれが投資に回され、富を生んでいない点にある。これを“溶かす”ことに成功すれば、我が国はあと10年は生き残ることができる。そう、我々は安倍晋三総理大臣率いる官邸にも意見具申している」

最高幹部氏の話はさらに続く。

「ここに来て程なくして生じる予兆が出始めたのがインフレへの本格展開だ。そうなると、これまで20年以上にわたり我が国で続いたデフレの中で勝ち組であったはずの、2~3兆円以上の莫大な預金を抱えた“富裕層”たちが浮足立つことになる。なぜならば預貯金はインフレの中で紙切れへと近づくだけで、最も不利なポジションになりかねないからだ。やれやれ、そんなわけでそうした富裕層が大勢いる大阪に、来週は営業行脚なんだよ」

と最高幹部氏は、笑って私に語りかけてきた。

無論、私の方からは「そうなんですか、大変ですね、実に。お疲れさまです」と答えておいた。

そうした話をお聞きしながら私は一つのことを思っていた。私のアライアンスパートナーであり、金融マーケットの定量分析を生業(なりわい)にしている人物からも、実は同じ非公開情報を得ていた。どうやらヘッジファンドや機関投資家たちが世情、「ギリシャが危ない!」と騒がれていた頃に「程なくして株・原油・金(ゴールド)」のトリプル高を前提にしたポジションを取り始めていたのである。日米欧中がこぞって量的緩和をし続けているのであるから当然の成り行きなのだ。

だが今回は金融メルトダウンの爪痕が、各国による莫大な公的債務残高という形で残っている。株・商品高となれば国債からマネーは逃げる。それでもファイナンスしようとする国家を後目(しりめ)に各国の長期金利が急騰してしまう。利払いすらできなくなった諸国勢は続々とデフォルトへ追い込まれていく……。

「これから訪れるのは悪性インフレではありませんか」そう喉元まで出かかっていたが、ほほ笑んで最高幹部氏の元を辞去した。“真実”はそう程なく現れる。そう確信しながら。

原田武夫(はらだ・たけお)
元外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
https://haradatakeo.com/

真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
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知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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