「他責先進国」から「自責先進国」へ

時代を読む-第83回 原田武夫

時代を読む-第83回 原田武夫

2020年も2月に入り、我が国、そしてグローバル社会全体の世相は混迷の一途を辿たどっている。無論、どうしようもない不可抗力による状況は多々ある。しかし私の目から見ていると多くの混乱、とりわけ我が国におけるそれはどう見ても「人災」のように思えてならないことばかりなのだ。

個別の出来事を言えばきりがない。しかしそうした中だからこそ、これら「人災」に共通した要素を抽出するのには意義がある。それは端的に言えば「覚悟感」というか、「何かを他の誰か・何かのせいにせずに我が事として受け止める構え」がないということである。

とりわけ我が国においては平成バブルが崩壊し、「これはひょっとしたらば二度とリカヴァリー出来ないかもしれない」と皆が思い始めたあたりからこうした雰囲気が蔓延し始めた。経済的なパイが拡大しない中、チームワークではなく、我先に己の取り分だけを確保するという行動が蔓延するようになった。賢い者はそうした状況に耐えきれない中で一気にバージョンアップをしようと留学をし、海の向こうからのフレームワーク(枠組み)の伝道者として「俺だけ・私だけは生き残る」ことを可能にしようと躍起となった。それがまた我が国における集団主義を破壊し、総崩れとなったのである。

しかも事態はここで終わりではなかった。「勝ち組」の反対には必ず「負け組」がいる。「勝ち組・負け組」と揶揄(やゆ)している間はよかったが、やがて反転可能性がないと分かると「負け組」には怨念だけが積み重なるようになり、やがて無気力が基本となった。それでもなお、刺激して状況の改善を求めようとすると怒号が返ってくるようになったのである。「それは俺・私のせいじゃない」と。

今、そうした怨嗟 の感情が我が国社会において満ち溢れている。

その一方でエマージング・マーケット、とりわけ中国ではそうした事態はそこまで深刻ではないように演出されている。そのため、富裕な中国人たちと会うとよく言われるのである。「キミの国・日本はなんでそんなにしょぼくれてしまったのかい」と。その度に忸怩(じくじ)たる思いを余儀なくされる私がいる。

だが、事態はこれで終わりではないのである。我が国は常にグローバル社会の中でも先駆けて問題・課題が噴出する国である。

したがってそこで生じることはそのまま、いやもっとスケールアップしてグローバル社会全体で起きるのである。そのことの繰り返しによって織り成されてきたのが戦後の世界史であると言っても過言ではない。そうなると今後、何が起きることになるのか。

そう、世界中で何か不都合なことが起きると「誰かのせい・何かのせい」にする態度が蔓延することになるのである。既にあらゆる局面においてそうした傾向は出ており、その意味での情緒的な判断がグローバル社会の趨勢(すうせい)を激しく揺さぶるようになっている。これこそが西側社会を中心とした「右傾化」の真相なのであり、その淵源(えんげん)にあるのは都合の悪い事どものすべてを「誰かのせいにする」という意味での他責の念に他ならないのだ。

何のことはない、社会の全てに「他責の念」が見られるようになった我が国は「他責先進国」とでも言うべき状況に、世界に先駆けて陥っているのだ。しかしそうである以上、我が国こそがこうした「他責」から「自責の先進国」へと飛躍的な発展を遂げるチャンスを一番多く抱えているとも言える。まさに逆転の発想だが、そうした転換が生じるまでにはさらに落ち続け、貶められ続けなければならないのである。歯止めがかかるにはまだまだ事態は甘すぎる。

「 暁鐘の闇夜が一番暗い」そう言われて久しい。我が国における日昇は今、「自責先進国」になれるか否かにかかっている。


原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。

※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています

真のラグジュアリーとは何か

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