2020年に「全てが変わり始めた」世界。その先は?

時代を読む-第89回 原田武夫

時代を読む-第89回 原田武夫

ドア

2004年の頃のことだ。当時はまだ一介のキャリア外交官であった私の元にアメリカにおける「本当のユダヤ人」であるセファラディと呼ばれるグループの女性リーダーの一人からこんなメッセージが届けられた。

「早ければ2018年、遅くとも2020年までに世界の秩序は完全に変わる」

その中心が恐らくは我が国になると彼・彼女らとしては考えているというのだ。相手は何せ、アメリカ合衆国大統領の候補が決められる段階であらかじめ根回しを受けるほどのランクの人物だ。当時、物を全く知らなかった私は一体何のことを言っているのか皆目見当がつかなかったが、とにかく「2020年が人類史上、転換の年」というこのメッセージのエッセンスだけはしっかりと覚え込んだ。

そして今年、2020年。確かに「世界は変わった」。昨年(2019年)末から拡散し始めた新型コロナウイルス(COVID-19)は全世界を覆い、私たちの生活は劇的な転換を余儀なくされた。私自身はというとむしろ金融・経済における変容こそが先行すると考えていたが、寸前のところで生じたシンクロニシティを通じ、「まず起きるのはパンデミック」と悟り、自身で率いる研究所の未来シナリオのラインにも盛り込んだ上で今回の急展開に臨んだ。

パンデミックでロックダウン(都市封鎖)が現実に、かつ繰り返し行われる中で私たちの心は明らかに蝕まれつつある。変わった点は色々あるが、要するにバーチャル空間へと全員がテレワークで押し込められる中において、それに適合的な人物とそうではない大多数の間で越えられない溝が出来上がってしまった。私自身はというとそもそも著述家であり、場所を問わず「今・ここ(now and here)」で仕事が出来る職種からスタートしたので何ら苦労することなく「新しい現実」に立ち向かうことが出来た。我ながらそれなりにうまくいっていると自負している。

だが問題は「人間は出歩く存在である」というこれまでの真実を前提にした営みをされてきた方々なのだ。私たち人間は明らかに出歩かなくなった。その結果、それにまつわる全ての仕事が明らかに転換、さらには退場を余儀なくされているのである。それだけではない。私たち自身が「動かないこと」を強いられる中で精神疾患すら蔓延しつつあると聞く。「私はそうではない」と思うかもしれない。だがしかし、冷静に見つめなおしてみると以前とは違う「何か」に妙なこだわりを持ち始めている自分に気付かないだろうか。そしてその「何か」すら出来なくなった時、あるいは許されなくなった時、次に精神に支障をきたし始めるのはあなたかもしれないのだ。

「2020年に世界秩序が全て変わる」。そう聞いた時に我が国とアメリカ、あるいはそれ以外の世界の全てといった「国際秩序」のレベルで思考をしていた頃の自分自身がたまらなく懐かしい。事態はもはやそんなレベルではないのだ。事態は地球全体、いやそれをはるかに超えるレベルで進行しつつあり、しかも国同士がどうのこうのというレベルで問題が山積し始めているわけでもないのだ。当然、解決に際しても全くもって違う立場と視点から取り組まないとうまくいかないことも目に見えている。

未来を正確に見通すことは現段階で人類にとって不可能だ。だが極端な転落と転換を経験する中で私たち自身が必然的に「未来」に強烈な関心を持つようになることは目に見えている。しかもその向こう側で結果として今とは全く違う根本かつ共通認識の下で人類社会を再構成している私たち全員の姿も見えてはいるのだ。それではそれが具体的に何であるのか。引き続き、えも言えぬ「ワクワク感」を抱きながら前進して行きたいと思う。

原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。

※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています

真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
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アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
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