共鳴する思念

開業の地である元麻布から虎ノ門へ移転した「日本料理かんだ」。新しい店舗の設計を担当したのは、かの杉本博司さんだ。杉本博司さんと「日本料理かんだ」の神田裕行さんの対談をお届けしよう。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

開業の地である元麻布から虎ノ門へ移転した「日本料理かんだ」。新しい店舗の設計を担当したのは、かの杉本博司さんだ。杉本博司さんと「日本料理かんだ」の神田裕行さんの対談をお届けしよう。

神田 完成した店を見て思ったのは、木や石の自然なマチエールが持っている清潔感のすばらしさです。清潔感に対する思いは僕も相当ですが、杉本さんはもっと強い。そういう人がつくってくださった空間なので、清々しさが段違いです。
杉本 素材は一緒に選びましたよね。
神田 はい、一緒に産地まで足を運んだこともありました。このコロナ禍でよくないことはいろいろあったけれど、逆に、店づくりではいいことがあったんです。というのは、いつもは一年の半分はニューヨークにいらっしゃる杉本さんがあちらに帰れず、ずっと日本にいてくださった。しかも工事も、デベロッパーの都合で大幅に遅れていた。なので、店のことをじっくり、集中して考えていただく時間ができたのです。
杉本 その点に関しては、ラッキーでしたね。
神田 私は、これは神さまの啓示だと思っています。「お前、ちょっと待て」と(笑)。この時間に、杉本さんにカウンターに使う木の産地、床に使う石の産地に連れて行っていただくなどしました。人のいない江之浦測候所をご案内くださったこともありましたね。とてつもない贅沢です。
杉本 施主の方と一緒に使う材料を一つずつ探しに行く、買いに行くということは私にとっても非常に重要なことですが、なかなかできるものではありません。
神田 数ある素材の中でも、私はカウンターの春日杉が特に気に入っています。
杉本 春日杉は、奈良の春日大社の背後にある山からの杉ですが、このエリアは神域であり、特別天然記念物に指定されている原始林でもあります。木を切ることはできません。そんな中、ごくたまに台風などで木が倒れたら、それを木材にしていいことになっています。なので世に春日杉「もどき」はあるのですが、本物はとてもまれ。
神田 神域で育った神々しい木なんです。
杉本 板としては、はっきりした木目に特徴があります。時間の経過とともに、木目がいっそう浮かび上がり美しさを増していきますよ。
神田 今回、杉本さんの古美術のコレクションも内装に使っていただきました。カウンター内で柱に使っているのは、正倉院のものと伝えられる古材。奈良時代のものです。庭の祠も杉本さんが持ってきたもの。「かんだ大明神」と呼んでいます(笑)。
杉本 この店をやるのは10年間と決めているんでしたっけ。
神田 そうです、私が今58歳で、70歳まで現役と考えているので、厳密にいうと12年なのですが、目安としては10年です。私が前の地で「かんだ」をオープンしたのが40歳の時。とにかくお金がなかったので、カウンターは、最初は合板ですよ(笑)。でも一足飛びに高級店をつくるのではなく、年を重ねるごとによくなりたい、お客さまと育っていきたいという思いが自分にはあり、今までやってきました。これからの10年もそうありたいと思っています。
杉本 そのあとは悠々自適(笑)?
神田 まだ分かりませんが(笑)。若いスタッフたちにとっても、杉本さんがつくったこの空間で働けること自体が素養になるというか、目が磨かれていくと思っています。だから、スタッフがこの後どうなるかも楽しみなんです。

神田裕行氏

神田裕行 かんだ・ひろゆき
1963年、徳島県生まれ。大阪などでの日本料理修業を経て、23歳で渡仏。パリの日本料理店で5年間料理長を務める。91年に帰国し、料亭で経験を重ねつつ、姉妹店の開業も指揮する。2004年独立。07年『ミシュランガイド東京』で三つ星を獲得。『日本料理の贅沢』(講談社現代新書)などの著書を刊行。21年ミシュランガイド「メンターシェフアワード」に選出される。22年2月、虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワーの1階に移転する。

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真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
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